「Bad End」

真っ白な雪が静かに降り落ち、地面に積もっていく。
鼻をさすような異臭とこびりつきそうな鉄の臭い。
もうこの世界には意味など存在せず、ただ崩壊へと向かうだけである。
おぼつかない足取りで、瓦礫の平野と成り果てたかつての愛しい世界を踏みしめ、世界の縁を目指す。
息は白く凍りつき、風は死んだように吹かず、太陽は閉ざされ、灰色の天井に覆われ、世界の最後の慈悲のように雪は優しく振り続ける。
我々はどうやら世界自身の逆鱗に触れてしまったらしい。
おかげで自分たちの世界は全てが壊れた。
おそらくもうこの荒廃した世界に自分以外は生きていないだろう。
涙もでやしない、時間の感覚だってわかりゃしない、今は何日なのか、世界が死んだのは?昨日?それとももう何年もたったのか。
ただふらふらと歩くだけ。
瓦礫を踏みしめる度に思い出が頭を過ぎる。
「あ」
目的地のようだ。
世界の縁にたどり着いたらしい。
その先はなく、崖になっているその足元を覗きこむ。

そこは永遠と闇が続いていた。
無、音もせず、色もない、ただの闇。
吸い込まれるような闇が世界の縁にはあったのだ。
馬鹿だった。
荒廃した世界に希望を探し求め、絶望に突き落とされた。
ペタリとゆっくり地面に座り込む。
震える手を抑えても、視界が滲み涙が零れおちる。
「ぁあっ………どうして…ぁああぁ…ぁあっああああああぁぁああぁっあぁあああああぁあっ」
震える声は抑えられず、溢れでた涙も声も止められなくて、泣くことしかできなかった。
「お兄ちゃぁぁんっぅあぁぁぁぁっぁゔっレイト、グラディウスっあぅ…バーナー、零、ティア、キャンディーさんっぁぁぁあっあぁっルーファスさんっライトさん、藍……みんなっ」
「みんな居ない居ない居ない居ない居ない居ない居ないよっみん…なっあぁ…どこ……?どこなのぉ……」
ただ降り積もった雪に黒い染みを作っていく。
「誰かっ……誰か」











「誰か助けて」







昔むかし、あるところに、美しい世界がありました。
世界はいつもどんな時も、みんなが幸せに暮らすのを、笑顔で見ていました。
けれど、ある時1つの種が世界を争って戦争を始めてしまったのです。
争いは、他の種も乱入し大きくなっていくばかりです。
世界はそれが悲しくて、寂しくて、姿を消してしまいました。
世界には、双子の姉弟がいました。
その弟は、姉が消えてしまったことに酷く悲しみ、そして怒りました。
世界の弟は、存在する種族全てを死滅させ、ついには姉が愛した世界を暗闇に突き落としたのです。
あぁ、なんと哀れな。



「なんて、哀れな物語なのでしょうか」
そう、世界は本を閉じましたとさ。
めでたし めでたし。