失楽園 第一章 第6節

白銀の騎士は静かに佇んでいる。

腰まで伸ばした銀糸のような美しい髪をなびかせて。

だが、俺はそいつが口にした名前に、顔を白くさせることしかできなかった。

「アモル......だと......!?」

アモル=テラス、別名『銀狼』。

記録に残るは人類史最恐級事件の主犯、戦場を徘徊し、ただ斬ることのみを至上とする、正真正銘の化け物。

裏腹に、天界で特殊特攻部隊隊長を務め、世界を救った英雄の一人。

実力は天界でも五本の指に入るという天界軍屈指の剣士。

俺はすぐ様剣を構えた。

「悪名高き『銀狼』様が、俺達に増援だと......??ふざけるな!!!!お前らは、天使だろうが!!!!!」

「はい、それを承知で参りました」

「今更、はいそうですかお願いしますなんて.......馬鹿にするなよ化け物がっ....!!!」

「否定しません」

そうして騎士はおもむろに、天使の死体の上に腰掛けた、なにも感じないと言ったふうに。

「だが同時に、肯定もしない」

なんの感情も込められていない瞳を向けられて、全身の毛が逆立つ感覚に冷や汗をかいた。

ただただ紅い瞳の奥には俺を映してはいたが、何も見てはいなかった。

相手にされていない、俺を前にして何も思っていない、きっとこいつは息をする様に殺すだろう。

俺はすぐに一歩身を引いた、いまだ謎だが俺の悪魔は身体からでて、銀狼を輝いた瞳で見つめている。

この時点で悪魔は使えないだろう、どうすれば生き残ることができるか考えろ。

相手の絶対的存在が枷となってしまい足が竦む。

「そうですね、ならば第三勢力の出現と捉えてもらって構いません。例えば、『反乱』とか」

「反乱だと.....?」

「ええ、私達は反乱軍です。ですので現在対立している人間に協力を乞いに来ました、と言えばそちら側の陣営に入れてもらえるでしょうか」

そうして百合のように微笑んだ。

だが、何故俺達なのか。

何故そこに俺達が選ばれたのだろう、こんな辺境の国の騎士団にではなく、人間という点でなら世界政府に協力を仰いだ方が力があるだろう。

俺の心を汲み取ったように白銀の騎士は、首を振る。

「いえ、あの勢力は信用できません。あなた達は先日熾天使セラフィムと交戦したでしょう?彼はこちら側、第三勢力の一人です」

「どういうことだ」

「そのままの意です。彼は探していました、仲間となってくれる人間を」

「.......それが、俺達ということか」

後ろに控えていたジェイドが、俺の代わりに返事をした。

どうやらジェイドもこの状況を打破しようと頭をフル回転させているらしい。

実力の差は歴然、死に見つめられたと言っても過言ではない。

「どうやら彼はあなた達に決めたようですので、その意向に従い参上しました。彼の行動は神の意思です」

熾天使ミカエルが第三勢力?ミカエルというのは天使の総司令官だろう、司令塔がいない奴らはいったい誰が率いてるというんだ」

白銀の少女は白百合の微笑みで立ち上がった。

優雅になびく髪からはふわりと花の香りがした。

「さて、そこから先は君より上の人と話そうかな」

少女は俺達の向こうを見ていた。

背には遠く離れた帝国の防壁があるはずだ、視線を辿るように後ろを向く。

そこには、援軍拒否したはずの増援が歩を進めていた。

先頭を行くは騎士団長、馬に跨り走らせている。

その後ろを多くの騎士が歩いていた。

彼女は援軍がここまで到着するのを待ち、その間も笑顔を貫く。

騎士長は俺の隣までくると、馬から降りて兵を周囲に囲ませ体勢を整わせる。

槍兵が盾兵の後ろから槍を構えている。

全方位から覗く槍は天使へと向いていた。

「騎士長.....」

「無事で何より、お前らは下がってろ」

いつになく緊張した面持ちで俺達に言い放った。

騎士長も目の前の敵のただならぬ圧倒的なまでの「死」を感じとっているらしい。

ジェイドはそれを受けて慌てて後ろに下がったが、ここで側を離れるわけにはいかないと感じ、俺は騎士長の馬の手網を握りしめた。

それを横目でみていた騎士長はそれ以上は語らなかった。

まさに一触即発の空気に喉をならす、周囲の兵たちの緊張感を背中で感じる。

その緊張の糸をきったのは白銀の騎士だった。

彼女は雪降るなかでいてさらに白く見えて、消えてしまいそうな儚さである。

腰布の端をちょいと手でつまみ、どこぞのお姫様のように優雅に頭を下げた。

動作の一つ一つが美しく、目が奪われる。

「お初にお目にかかります。上位階級第二位智天使、ケルビムが一対、アモル=テラスと申します」

「.......この帝国の騎士団長をやらせてもらっているドクトゥス・ミセルだ」

騎士長は重い声で答える。

この天使ならば俺達を数秒足らずで、今ここにいる全ての人間の首を跳ねられるだろう。

痛みを感じる間もなく、死んだと認識する前に死ぬ。

この場にいる全ての人間という人間が、天使の一挙一動に目を見張った。

それを受けても笑顔で居られる肝の強さは、容姿からは想像出来ない。

「今はお見えになられない我が主の代理、ミカエル殿の命により参上仕りました。貴公等を騎士とお見受けして、一つお頼みしたい。どうか武器収めて頂きたいのですが」

「ほう、何故敵に武器を下ろす情けをかけられようか。まずご要件を伺おう、話はそれからだ」

騎士長は毅然たる態度で堂々と答えてみせる。

それを受けて天使は容易に行くとは思っていなかったのだろう、平然とした顔で会話を続ける。

「それもそうでしょう、私も部下にはそうさせると思います。.......そうですね、簡潔に言うならば、私は敵ではなく味方です。いや同盟を組みたく参りました。証拠として天使一師団程でしょうか、手こずっていらっしゃったので少しばかりお手伝いさせていただきました。それにお二人を傷つけることなくお返ししましたし、今だって武器を構えてはいません」

にこりと笑う、それは上辺だけの笑顔にはすくなくとも見えなかった。

騎士長はそれでもなお頑として受けようとせず、ただ天使を見ていた、あるいはそうすることしかできなかったのだろうか。

それを受けて、銀狼は軽く溜息をつくと、腰の剣帯に手をかけた。

そして得物を鞘ごと取り、こちらの方へ放り投げた。

空中で回転し、地面に刺さる。

あのように放り投げて地面に突き刺さるものか、俺は思わず二度見してしまった。

「私はレイト第三皇子に仕える者です。名前はご存知ですね?」

「......天界の次期王で八年前の英雄だろう。天空神ゼウスと太陽神アポロンの意志を継ぐものであるとも」

「そう、肝は『ゼウス』です」

彼女は少しイラついた様子で辺りを見回した。

「ゼウスというのはオリュンポス神族の一人で、現在天界を牛耳っている神々のことです。その前はティターン神族という神々が天界を支配していました」

「それくらいは知っている。ティターン神族はオリュンポス神族とのティタノマキアの戦いに敗れ、政権を奪われ、挙句の果てにタルタロスに幽閉されたのだろう」

「そう、彼らはタルタロスに幽閉されていた、筈だった」

彼女はよく見ると冬とは思えない程の季節を間違えているような薄着で、白い肌が多く見えていた。

手先も鼻先も赤く寒そうだ。

「だが八年前、世界を救った英雄たちはタルタロスを倒してしまった。するとどうだろう、ティターン神族はタルタロスから抜け出してきたのです。彼らは天界の政権を奪い、オリュンポス神族に、ゼウスに復讐を果たす為に、天界の首都アクロポリス以外の全ての浮遊島や街、村落を制圧、天界は文明としての機能を停止しました。あるのは下界と同じ、いやそれ以上の荒み具合と言えるでしょう。皮肉ですね、世界を救った英雄は世界を救ってはいなかったのですよ」

そうして彼女は雪が降り積もった冷たい地面の上に膝をついた。

交戦の意図はないと示すためだろうか。

「彼の神々はティタノマキアの再演をしているのです。いや脚本はかわっていますね。具体的に言うならば、今回の公演は人間という役がいるということです」

「.....どういうことだ」

「興味が湧きましたか?ティターン神族は人間を利用しているのです、いえどちらかというと、一気に掃除してしまいたいのですよ」

少女は降り積もった雪の中に咲く可憐な百合のようだ。

「まあ、簡潔に申し上げますと、ティターン神族の目的は世界の再構築です」

「再構築.....?」

俺は思わず口に出してしまった、咄嗟に俯いた。

すると天使は次に俺をみて話始める。

「ええ、もう一度自分たちの手で支配する為に、もう一度やり直す為にキレイさっぱり掃除をし、全てを初めから」

「その為には殺り合わせる方が楽だということか」

「理解が早くて助かります。はい、そういうことです、世界規模の戦争を引き起こし、残党は後で掃除すればいいだけ」

騎士長は彼女の顔を少し見つめた後、そのまま手を上げた。

すると槍兵は槍をあげ、盾兵は構えを解いた。

「ありがとうございます」

「お前のそれが正しいとして、何故俺達でなければいけない。世界政府に頼みこむのが妥当だと思うが」

「でしょうね、ですが信用できません。何故なら、彼らの上層部はティターン神族と繋がっている可能性があります。だって可笑しいじゃないですか」

そういって彼女は鼻で笑って、馬鹿にしているような顔で俺達を見た。

「だって彼らは天界へと繋がる扉の存在をしっているんですよ?私達が教えたんですから。友好の証にと飛ばなくても行ける下界と繋がる扉を」

「なるほど、知っているはずなら初期の段階で軍隊を編成し天界へ突入、または和平締結を結ぶ為に何らかのアクションを起こしていた、と」

「そう、ティターン神族に丸め込まれた可能性があります、例えばお前達だけは『楽園』へ返してやろう、とか」

「『楽園』、神の禁を破り人間が追放されたというエデンの園のことか.....」

「そうです、そしてエデンの園には生命の樹があります。生命の樹の果実は永遠の命を与えるものです、そんなものがある場所へ導くはずがないと考えればわかったでしょうに」

騎士長はこの話を噛み砕くように少し黙りこむ。

そうして天使の刀を地面から引き抜いた。

「貴殿の申し出は理解した。だが、それが正しいという確証はどこにある、何を持って命を賭けるに値するか」

騎士長は刀を少女に向けた。

それをみた俺の悪魔は、ムッとした顔で騎士長に手を伸ばした。

だが少女の声で制される。

「やめろレヴィ」

「っ、だけどアモルこいつ、アモルに刃を向けやがった」

「やめろ」

少女の未だかつて無い殺気が、刹那周囲に広がり、目の前を嵐のような暴風が吹き通った気がした。

こいつは違う、俺は何かこの少女から異物を感じとった。

だがそれはわからず霧の中に溶けてしまった。

その少女は向けられた刀の鞘をみて、痺れを切らしたかのように、まさにピリっと電気が走った。

「ならば、最初に戦いが始まり、そして滅んだ王国」

その言葉で俺は顔を上げた。

そう、その王国とは俺の母国だ。

「あそこには一度だけ、開幕を知らせる為に神が舞い降りた。その神の名前を知っているか?」

覚えているとも、鮮明に覚えているとも。

時計塔の上で、笑いながら叫び散らしていたその名前は。

ヒュペリオンティターン神族の太陽神だ」

彼女は人間達を一人ひとり見回した。

先程までの少女らしさは全くない、歴戦の戦士のような気迫で続ける。

「ならば逆に問おう人間達よ。貴様らが命を賭けるに値するものとはなんだ。復讐に燃え、ただやられたからやり返すを繰り返すばかりのこの戦争に、いや戦争とも言えない代物のこの殺戮を、子供のように泣きわめきながらやることが、命を賭けるに値するものなのか」

少女の形をした戦士からは怒りを感じとった。

このくだらない戦争を鼻で笑い、本気で怒っている。

「そうだと言うならば貴様らは騎士ではなく、また戦士でもない、ただの言い訳を続ける小さな子供にすぎん。いや子供よりもタチが悪い!!子供ですら学習をするというものよ、貴様らは復讐という一点を見つめ続け、盲目になってしまった哀れな雛鳥だったという訳だ」

白銀の騎士は鼻で笑っては、鋭い眼光で騎士長を見た。

この言葉を受けて周囲の騎士達の不満が声となって出ていく。

ザワザワという声の中で、一人の人間が剣をもって現れた。

「馬鹿野郎....死ぬ気か.....!!!」

俺は柄を握るが、騎士長の待てという声で制された。

どうしてだ、このままでは殺されるだけだ。

そいつは震える剣で、少女を捉えている。

「さっきから聞いていれば、好き勝手いいやがって!!」

「ならば殺すか?」

彼女は鋭い眼光と強い声でぶれる剣先を見ていた。

「いいだろう、殺したければ殺すがいい。元より八年間、動きたくとも動けなかった私とは違い、復讐に燃えるばかりで、他にも選択肢があって正しい道を歩み、戦争終結の糸口を見いだせたかもしれない貴様らを、たった私の命で悪戯に命を散らすことなく終わらせられるなら本望だ。どうする、首をはねるか?心臓を刺すか?」

ますます震える剣先に、立ち上がった少女は自ら近づいていく。

遂には鼻先まで剣先が震える距離までに至った。

「ほら、好きにするがいい。そうだ、殺したからには同盟を組んで貰うぞ。ああ勿論、私の首をはねただけでは戦争は終わらんとも。貴様らが信じている敵とやらの軍力を削げたわけでもない、本当の無意味の殺人だが、それで私の使命が果たせるならば満足だ。ほら、どうした、そんな震えた剣先では、人間も殺せまい」

そして震えた剣先は少し頬を切り裂いた、傷口からは血が垂れ、頬を伝って地面に落ちた。

殺せる、今なら殺せる距離で、状況にある。

だができる訳が無い、天使といえどそれは少女の形をしていた。

どんな歴戦の戦士のようであって、剣の達人でも、女の子だ。

女の子が小さな背中にいっぱいに使命を背負って、覚悟決めて俺達と相まみえている。

その瞳は力強い意志がこもっていた。

そんな女の子を間違っても殺せはしない。

しかも俺達にとっては図星のような発言を、少女は的確に言ってみせる。

まるで千里眼でも持っているようだ。

剣を構えていた人間は、情けなく地面にどかりと尻もちをついた。

それを見て少女は蔑むように言い放つ。

「覚悟もない者が、剣を握るな」

それはこの場の全ての人間に言い放ったように聞こえた。

緊張感は更に張り詰め、誰もが息を潜めた。

誰もが自分に言われているような気がした。

「もう一度問おう人間よ。貴様らが命を賭けるに値するものとは何か。復讐に燃えることか、臆病になり続けることか、覚悟もない者を戦地に送り出すことか。ならば貴様達は戦争を履き違えただけの愚か者である。殺される覚悟のない者が命を奪った所で心が折れるだけだ、復讐に燃えた所で虚しさが残るだけだ、臆病になり続けた所で何も見えてこないだけだ」

正真正銘の騎士は、拳を握り語りかける。

「否だ、断じて否である。復讐に燃えた所でこの殺戮は終わらん。私一人殺した所で戦況は何も変わらん。ならばこの殺戮、貴様らの復讐心、如何様に鎮められるか?」

そして強く続ける。

「貴様らは八年間奮闘したとも、そこは賞賛に値する。だが復讐によっての殺戮はまた憎悪を生むだけである、ならばこの殺戮を終わらせられ、かつ大勢が死なずに復讐を果たせる方法があるとしたら、どうする」

熱のこもった声で真剣に問いただし、演説でもしているかのようであった。

一人ひとりの人間に目を配り、しっかりと思いを伝えるように。

「それは全ての元凶、ティターン神族をタルタロスに叩き返してやることだ。残念ながら、彼の神々は殺すことは出来ない。故にタルタロスに入れられたのだ。タルタロスとは、世界中の罪と闇が集約された地獄、いや地獄より酷い煉獄、永遠を生きる神々が罪を償う場所だ。繰り返される拷問、さぞかし辛かろう。そんな場所が嫌で出てきたのに、もう一度戻されてみろ。死にたくもなるだろう」

そうして彼女は、これでどうだと言わんばかりに騎士長を見つめた。

騎士長は深いため息と少しの沈黙を経て、刀を下ろした。

「....なるほど、これが英雄と呼ばれる所以か」

「なに、殺人鬼の間違いでしょう」

彼女は少し申し訳なさそうに、目を細めた。

騎士長は少女に刀を手渡すと、馬の上に跨った。

俺から手網を引き受け、この場にいる全ての者にこう告げる。

「皆の者、帝都へ帰還せよ」

その言葉を受けて、皆動揺したが、やがて帝都の方へと歩きだしていった。

その中で騎士長は俺の名を呼んだ。

「ルクス、彼女を....いやアモル殿を案内して差し上げろ。何かしら勝手のわからぬ事もあるだろう、しばらくの間は側付きを命ずる」

「はっ。拝命致しました」

「部屋は、西の客間が一室空いていたはずだ。それから、世界政府元帥アルブム卿がアモル殿に会いたがっていた、お連れしてあげなさい」

「アルブムがここに居るのですか」

彼女はその名に反応して、少し顔が和らいだ気がした。

「はい、ですが彼は世界政府の者、貴殿の話からするとあまり信用はできないと考えます」

「いえ、彼は信用するに値する男です。以前の戦いの時の戦友でした。アルブムは、恐らく世界政府全体の意思としてではなく、個人の意思で来たのでしょう。彼は人一倍熱い意志を持った男ですから」

そうして胸に手を当て、目を閉じると思い出すかのようにそう言った。

少女はいつの間にか白百合のような口調に戻っていた。

「そうですか。とりあえず、そこのルクスに付いてきてください。具体的な話の続きは戻ってからと致しましょう」

そして騎士長も背を向けると、帝都防壁へと馬を走らせていった。

俺は心の中で深いため息をしてから、彼女に向き合った。

「アモル様、我々も参りましょう」

「ふう....アモルか、隊長、とりあえず様呼びはやめて欲しい」

「は、はあ.....」

突然先程までの白百合のような儚さは何処へやら、まるで意図的に人格を切り替えているようだ。

心を読み取ったかのように、刀を剣帯に刺しながら答える。

「言っておくけど、多重人格者じゃない。こうやって意図的に切り替える事で、気持ちのスイッチを入れているだけ。そうやって仕事、こと戦いとの区別をつけてるってわけ、ルクスも出来るようにしたら楽だと思うけど」

「それはどういうことで、アモ.....、隊長」

いきなりアモルと呼び捨てするのは躊躇われ、比較的呼びやすそうな「隊長」と呼ぶことにした。

すると彼女は隊長と呼ばれると少し嬉しそうに俺を見た。

「なに、ちょっとだけ似てると思っただけ」

そうして白銀の騎士は、軽やかな足取りで雪舞う荒野を歩き出した。

その背中には少しの寂しさと憂い、そして手重い覚悟がのしかかっているのが垣間見えた気がした。