ソレイユ 一日目 『没 限定公開』

唯一ある記憶は誰かに名前を呼ばれたこと。

その記憶が自分の中で最も古いものとなった、それ以降の記憶、何処で生まれ育ち、友、親の顔さえ思い出せない。

確かに誰かに呼ばれた、何か必死に訴えながら。

これを最後に自分は恐らく記憶が消えたのだ。

思い出す度に、何か自分にはこんなとこにいる場合ではない気がしてならない。

胸の奥がチリチリとやけ、焦燥感が追い立てる。

早く、早く、と囁く己の声がやけに脳内に警鐘するのだ。

一体自分は、記憶と一緒に何を置いてきてしまったのだろう。

ポツリと額に冷たいものが弾ける。

俺は目を開ける、目の前に広がる青空には夏らしい雲ばかり。

不思議に思い体を起こす。

そこには魔女がいた。

とはいっても勿論顔見知りで、如何にも絵本に出てきそうな魔女の服だ、彼女は手に水筒を持っている。

恐らくその水筒についた水滴なのだろう、俺を覗き込んでいた。

そして向日葵のように微笑んだ。

「ナイラ」

「レイト君……ちゃんと『名前』で呼ばなきゃ」 

「あぁ…すまん、キャンディー」

「それで、レイト君こんなところで何してたの?」

「昼寝」

「フォルが探してたよ?」 

「また仕事か……」

 俺は重い腰を上げ、昼寝用に丁度良かった岩から飛び降りた。

「そうだ」

俺は岩から降りてくる彼女に問う。

「ティアはどこにいるか知ってるか?」

「いつものとこ。レイト君待ってるんじゃないかな」

「そうか、サンキュ」

「待って、私も一緒に行くわ」

彼女は駆け足で俺の隣に並ぶ。

それは四年前の話だ。

「ソレイユ」の皆がいうには、空から湖に落ちてきたらしい。

そんな訳あるか、と思うが湖の近くに聳える崖を見れば、あんな高いところから恐らく落ちてきたと誰もが思うものだろう。