読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

「喧嘩」

「堕ちたな、アモル」
長年付き合いがある奴から哀れみと怒りを含んだ目を向けられた。
けど私はそれどころではない、親友を助けないと…。
「アモル」
刀をズルズルと引きずる、刀ってこんなに重かっただろうか。
引きずり跡は地面に細く伸びていく。
「アモル」
私は親友を助けないといけないのだ、だからお前なんて今構ってる場合ではない。
次の場所に……。
「アモルっ!!」
肩を力強く掴まれる。
そんなに気を取り乱して、いったいなんなんだ。
そいつは私の両肩を掴んで、目を合わせる。
黒い目からは、哀れみと怒り、希望、悲しみ、いろんな感情が感じられ、気持ち悪い。
なんだ、なんなんだ、なんで、どうして、私にそんな目を向けるのだ。
そんな目で、そんな、やめて。
「周りをみろ!!お前はっ……どうしてそんな道しか歩けないんだ!アモル!!」
周り?周りには雪しかないじゃないか。
ただ一面の雪、雪は未だ降っている。
ただ、一つ、私は、本当は分かっていたのかもしれない。
「現実をみろ!!!アモルっ!!」
そいつの声を聞いて、ふと視界が何を映す。
私は周りに目を凝らすと。




私は死体の山に立っていた。
「…………ぁ」
数十人の死体の山に立っていた。
死体に雪が降り積もり、赤く染まっていく。
鉄の臭いが辺りを充満させ、死体は無残にも切り刻まれている。
「…………ぁァ」
音が引いていく。
私が殺った。
だって、だって。

「…おかしいじゃない」
「何がおかしいんだっ……!」
「おかしいじゃない!!!」
私は肩の手をふりほどく。
それから相手の白いマフラーに、血のついた手で思いっきり掴んで、自分に引き寄せ、息を大きく吸い込む。
「おかしいじゃないっ!!どうしていつもいつも私だけ何か奪われなきゃいけないのよ!!どうしてっいつも誰かの分まで不幸になって、幸せそうな奴らをただ隅っこで指くわえて見なきゃいけないのよ!!そんなのおかしいじゃない!!」
「どうして!いつも私ばかり嫌な目にあうのよ!!どうしてっどうしてどうしてどうして!!!」
「みんなも、私みたいに、私、私の気持ちを知ればいいんだ!!痛くて、苦しくて、辛くて悲しくて寂しくて怖くて、いつも誰かに怖がってた日々を!!」
「っ………返してよ!!私の親友……返してよ!!いつもお前らの分まで不幸になってあげてたんだから、私の幸せ……返してよ!!!」
私は目に涙を溜めて、必死に睨んだ。
相手は、ただ私の目を見ていた。
沈黙が流れる。
そして、相手は息を吐くと。
「充分か」
震える声は、怒りを抑えていた。
相手は私の手を掴んだ。
「それで、充分か」
相手、レイト=ウルは、私の手をふりほどく。
「アモル、自分だけが不幸だと思いこんでんならそれは可哀想だな」
「はぁ……?」
「怖がってたのはお前が臆病だからだ、幸せそうな奴らをただ隅っこで指くわえて見なきゃいけなかったのはお前が、乗り越えて、行動しなかったからだ、お前はいつも、何かを奪われていたのは、お前の心が弱かったからだ」
「お前の不幸は自分の心の弱さだアモル、強くあろうとせず、ただ周りを巻きこむことしかしてこなかったお前の弱さだ」
「違うっ……私が弱かったんじゃない、周りが……」
「じゃあ、同情してほしいのか」
ピタリと動きを止める。
私が、同情、シて、ほしイ、?
「同情してほしいなら、してやるよ、あぁ可哀想だな、自分の弱さを認めずにただ周りのせいにするだけで、自分が不幸だなんて、そりゃ同情するわ、可哀想だなアモル」
同情、可哀想、弱い、臆病。
私の嫌いな言葉が次々と並べられていく。
レイトはそれを知っているだろう、わざと、なのだ。
だけど。
「あと、お前に俺らの分の不幸までいってるってのは、ただの勘違いだ、自分の不幸は自分で乗り越える、てめぇがただ溜めに溜めすぎて他人のものまで引き受けてる、と勘違いしてるだけだ」
レイトは静かに吐き捨てた。
所詮、お前はそんなものだと。
吐き捨てられた。
私は、俯き、音が引いていくのを感じながら、刀をレイトに向ける。
「なら、教えてくれなかった、周りだって悪い」
レイトはそんな私をみて、ため息一つつくと、白いマフラーを外して放り投げる。
「じゃあ、今教えてやるよ」
手で左目を覆うと、目の模様が消え、変わりに炎が灯される。
あの状態のレイトは、本気だ。
「お仕置きが必要だなアモル」






「はぁっはぁっはぁっ……ふっ…ぁゔ」
腕の火傷を抑える。
周りは炎がチラチラと燃え残りがある。
雪はとけ、上空には炎が私を標的に何個も浮かび上がっていた。
そのひときわ大きい炎が、私に向かってもうスピードで落ちてくる。
「セイっ!!!」
私は力を振り絞り、自身の体内で生成される雷を最大レベルまで引き上げる。
それを手から刀に流し、炎に向かって刀で切りつけ相殺する。
その反動で5mほど体が吹っ飛び、地面に叩きつけられる。
私は膝を地面につき、レイトの姿を捉える。
レイトは、それでもただ何事もないように立っていた。
黒い目が炎を反射させてひかり、瞳は私を捉えている。
無傷、私はまだ一太刀もあびせてやっていない。
私はそれがどうしようもなく怖かった。
私は殺されるのだと悟った。
だってそれはそうよ。
今まで他人のせいにして、人を殺しまくった殺人鬼が殺されるはずだったのだから。
けれど殺されることにたいしては怖くはない、生きてることが怖いのだ。
だから、ここで消えれるなら本望だ。
刀を強くにぎったまま私は朦朧とする意識のなか、目を閉じる。
重い足音が私に近づいてくる音がする。
私の目の前で音が止まる。
あぁでも、知らない奴に殺されるよりこいつに殺されるのなら悔しくないや。

「勝手に死ぬな、クソチビが」
「え」
腕が何かの、よく感じたことのある重みを受け取る。
目を開く。
「これでお互い様だな」
そういって、刀を根本まで横腹に自分で突き刺していた。
「お前っ……!ば馬鹿なのか!?」
「あぁ、嫁にも、よく言われんな~」
苦しそうに言うと口から血を吐き出す。
「だって、お前の方が痛いだろ」
「はっはぁ!?」
「お前の方が、今まで痛かっただろ」
体が引き寄せられ、レイトの胸にコツんとぶつかる。
抱きしめ……られてる……?
「確かにお前は弱い、だからお前はいつも奪われていたのかもしれない、けど」
「それを守ることができなかった……俺達も悪かった」
手が震える。
やめてくれ。
殺すならはやく。
「悪かった、ちゃんと守ってやれなくて、今まで、痛かったよな、ちゃんと守ってやってたら、レーディックを助けられたかもしれない」
「お前は弱い、だから強い俺達が、お前を守ってやんなきゃいけなかったのに、それに気づけなくて、悪かった」
刀から手が離れる。
震えがとまらない、いまさら何を。
でも、でも。
温かい、温かい。
「あったかいなぁ」
涙がぽろぽろとこぼれる。
人の体温が温かい。
いつからだろうか、誰かの体温を感じられなくなったのは。
誰にも触れられなくなったのはいつからだったか。
親友は優しかった、けれど私の気持ちを理解はしてくれなかった。
だから、温かい。
その優しい温度が、久しぶりで。
「あったかいなぁ……あったかいなぁ…」
涙がとまらないのだ。
「よしよし、今まで頑張った、だから泣いていいんだ、痛かったなぁアモル」
「うんいたかった……だれも見てくれなくて、いたかったっ」
親友は私を救ったけれど、心は見てくれなくて。
表面上では救われたけど、心を救われるのをずっと待ってた。
「もう1人じゃない」









「なぁ、お前マジで馬鹿なんじゃないか」
「死にそう、いやマジで、だから早くしろチビ」
「すいませんね、チビ、なもんでお前と身長差ありすぎて運びにくいんですぅ~、大体カッコつけて自分で刺さりに来たお前が悪い」
「何とでもいえっ…てアモルさんっ!?肘、肘が、傷にあたってますよぉっ!?」
「えっあぁ~ごっめん~気づかなかった~、なんかうるさいから無意識にやっちゃった~」
「クソッこいつマジでクソだな!!」
「黙れ白マフラー、ほら、家着いたぞ」
「あぁ、嫁に怒られんな」
「全くだ、まぁ、一緒に怒られてやらなくもないぞレイト」
ツンデレ発動すんなしクソチビ」






「何してた?そりゃまぁ」
「ガチ喧嘩、だな」
私はにこりと微笑んだ。